私は六本木が大好きです。この街のスノッブさと猥雑さが混じり合った空気が好きです。集まっている人たちのパワーが好きです。六本木に事務所とワークルームがあり、もう25年以上、この街を見続けてきました。
私が毎日執筆をしているワークルームの隣のビルは、私の友人のビルです。友人などと呼ぶのはおこがましいですが、六本木の夜のエンタテインメントを戦後から牽引してきた偉大な人物です。ヨーロッパから取り寄せたレンガで作った、この街のエンタメの歴史を象徴するようなビルです。
その友人が、今年の初めに他界しました。
そして現在、そのビルが……、全国チェーンの某小売店の店舗になったのです。歴史あるレンガを全部はずして、アニメの看板が大々的に設置され、六本木に街に、無機的で無作法な広告塔を掲げています。いいんですよ、それが経済の原則だし、そういった物も飲み込んでいくのがこの街ですから……。
話は変わりますが、小樽にある有名なスイーツショップ「ルタオ」は、小樽の街の中に何店舗もあります。道を挟んでルタオが2軒、という場所もあります。これは街の再開発で、全国チェーンの小売店が入るのを止めるために、次々と非効率的と言える出店を続けてきたのだそうです。
小樽の景観を守りたい。その気持ちが町の人に愛されて、人気ショップになっていると聞きました。
私にもう少し甲斐性があれば、六本木の友人のビルを守りたかったです。